この写真は当たり前ですがトビです。2年前のちょうど今頃、宮ヶ瀬で撮ったものです。それをワシだと思いました。理由は後で書きます。
バードウォッチングを始めたばかりで、カワセミ以外の鳥もみたいと思い始めた頃、それなら神奈川県の宮ヶ瀬湖だろうと、夫婦で出かけたのでした。はじめの頃、ジョウビタキに出迎えられたりで幸先上々と思われましたが、鳥影見えず。加えて初心者の常、木の上ばっかり見て首は痛いし、足は棒。橋のところでカワウを見た程度でした。それからも歩きに歩き、終点が彼方に見えだした頃、もう引き返そうということになったのです。とぼとぼと帰り道、また先ほどの橋まで戻ると、すれ違う方からオシドリがいますよ、と言われました。橋から下を見るとちょうど日陰になった場所にオシドリがいます。暗い、遠い、と思いながらもしばらくは見ていました。
なにげなく反対側を振り返るようにみると、なんとこの鳥が止まっているではないですか。
あれを見ろ、猛禽だ。妻も驚いたように感嘆の声をあげました。私はやり始めたばかりのデジスコを構えるや撮り始めました。途中でレリーズを落とし無くしてしまっていたので、シャッターは手押しです。「すごい。すごい。猛禽は初めて見た!」と二人ではしゃぎ回ること暫し。
しかし、私は冷静になりました。猛禽だがいったい何という鳥だろう?鳥の知識のない頭の中でいくつかのことを箇条書きにしました。
1.眼前の鳥はワシ・タカ科の鳥であることは間違いない。
2.図鑑で見たあこがれの鳥、オオタカではない。
3.オオタカは大型のタカと書いてあった(ような気がする)
4.ワシ・タカの区別は要するに大きさであって、大きいものをワシと呼ぶ。
5.オオタカより相当大きいこの鳥はワシである。
6.尾が白くないのでオジロワシではないが、それ以外のワシである。
シャッターを切りながらこれだけのことを考え、妻に結論を告げました。眼前の鳥は何ワシかはわからぬがとにかくワシである、と。
「こんなところにワシなんかいるのかしら。」などと言いながら、もう見飽きて「あっ、カケスがいる。カケスがきれい。」などと別の所を見ている。
大発見を前に、それに気づかず無邪気にカケスを見る妻よ、それはそれでいい。かのヘーゲルだって、フォイエルバッハだって妻は凡婦だったかも知れないのだから。などとさらにシャッター100回以上。
ビジターセンターに入るやいなや、職員のオネーサンに、「この鳥を撮りました。この鳥は何ですか?」
デジカメのモニタを覗いてオネーサンは会心の笑みを浮かべて「わー、トビをきれいに撮りましたねー」
妻に慰められながら、かくして私は知識を深めたのでした。2度とトビをワシと間違えることはありません。
そして、記念すべき野鳥観察日となりました。このトビさんは永久保存版です。